家づくり

【実体験】建築トラブル、本人訴訟でほぼ勝訴した話〜引渡遅延損害金を巡って〜

建築会社(工務店)と揉めに揉め、私達は建築会社を訴訟することにしました。
なぜ訴訟することにしたのか、弁護士をつけずにどのように裁判を進め、結果ほぼ勝訴という形で終わることができたのか、実際に本人訴訟をやってみた感想をお伝えしたいと思います。
また私達は弁護士でもなく専門家でもないので、この経験談はあくまで参考の一つとして御覧ください。

なぜ建築会社を訴訟することにしたのか

私達が建築会社を訴訟するに至った経緯をお話します。
まず初めに訴訟理由ですが「住宅引き渡し遅延による遅延損害金請求のため」でした。契約書に記載されている引き渡し期限から3ヶ月以上遅延したため、建築会社に対して契約書通り3ヶ月分の遅延損害金を請求しましたがこちらが納得できる説明もなく遅延金を支払わなかったため訴訟を起こすこととなりました。

たかが3ヶ月の遅延でしょ、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、打ち合わせ時から引き渡しに至るまでの1年半近くの間に受けた対応・言動の全てに対して怒りと不満が積み重なり、その上遅延に対して何も責任を取らない態度に怒りが爆発!
結果、「本人訴訟」という手段を取ることにしました。

「住宅引き渡し遅延」の損害金請求について気をつけること

住宅引き渡し遅延で損害金を請求できる場合は以下に限られます。

①契約書に記載があること

契約書に引き渡し期限が明記されており、期限までに引き渡しがない場合に損害金の請求ができるという内容が記載されていないと請求は難しいです。例えば口約束で「〇〇までに引き渡します」と言われ、そこから遅れた場合の請求はできません。必ず書面でもらうようにしましょう。

②遅延の理由が建築会社側にあること

遅延の理由は色々あります。例えば、施主が途中で仕様を変更したために工期が遅れたという場合は遅延理由が施主側にあるため損害金の請求はできません。また台風で建築中の建物自体に被害が出た場合も不可抗力・正当な理由として遅延が認められるようです。人手不足・資材手配ミス・工程管理ミスなどが原因で遅延した場合は建築会社側の過失であるため請求できる可能性は高いです。

裁判を起こす前に「住宅引き渡し遅延」についてネット等で情報収集すると、こんな意見が多く見られました。

  • 遅延したがそのまま何もせず(できず)泣き寝入りした
  • 建築会社との関係性が気になって請求できなかった
  • 住んだ後も付き合いのある建築会社に遅延金を請求するとさらなる不利益を被るのではないか
  • そもそも請求できることを知らなかった

さらには「遅延損害金を請求することはオススメしない」と書かれているものも多くありました。もちろん私達も損害金を請求することで建築会社との関係性が悪くなること、十分なアフターケアを受けられないのではないかということは頭をよぎりましたが、そもそも対応のひどい建築会社で何一つ良い印象がない状態だったことと、このまま何もなかったことにすることはできないと思ったことから訴訟することにしました。大概の人は泣き寝入りすることがほとんどのようですが、私達の怒りとストレスは計り知れないものがあったため行動に移すことにしました。

本人訴訟までの流れ

行政サービスを活用

法律に関してド素人の私達はまず最初に市が行っている無料の弁護士相談へ行きました。多くの自治体でこのようなサービスがあるかと思います。このサービスでは時間が限られているためそこまで深入りした話はできませんが、概要を話してどうしたらいいかということを相談しました。そこで進められたのが「少額訴訟」でした。

少額訴訟とは・・・
1回の期日で審理を終えて判決することを原則とした特別な訴訟手続きで、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り利用することができるもの

今回、私達からの請求費用は3ヶ月分の遅延損害金で60万円以内に収まるもので、かつ最初から弁護士には依頼をしないと決めていたのでこの少額訴訟を行うことにしました。
裁判を起こすと割に合わない、費用ばかりかかると言われるのは弁護士に弁護を依頼することで起こります。実際に少額訴訟にかかった費用は1万数千円ほどでした。一方、今回のケースで弁護士に依頼をすると着手金と報酬金で20万円弱はかかってくるかと思います(弁護士によりますが)。この金額は事務所にもよりますし、訴額によっても変わってはきますので参考までに。やはり弁護を依頼すると割に合わないので、私達はできる限り自分たちで行うと決め、本人訴訟をすることにしました。

申し立てを行う

訴える相手の住所地を管轄する簡易裁判所へ行き、訴状・申立手数料・必要書類(建築会社の登記事項証明書)を提出しました。訴状の書き方でわからないところなどは事前に質問するなどして用意しました。窓口の方が親切に教えてくださったので特段困ることはありませんでした。
その後建築会社から答弁書が送られてきたのですが、そこには普通裁判への移行を求める内容が書かれており、少額訴訟から普通裁判へと移行することになりました。送られてきた答弁書に対して私達は準備書を用意し裁判所へ提出しました。この準備書はかなり念入りに、私達の主張と今まであった事実を事細かに記載し、証拠も添付して提出しました。かなりの時間を費やしましたが、裁判では書類が全てだと聞いていたので抜けがないよう、言い残すことがないよう、全てを書き出しました。

いざ法廷へ

ついに法廷に立つ日がやってきました。テレビでよく見るあの法廷に立つのかと思うとかなり緊張しましたが、簡易裁判所の法廷ということもありかなりこじんまりとした法廷でした。ですが、法服を着た裁判官ら3名が壇上に着席しており、テレビで見るあの雰囲気はありました笑。念の為事前に事務の方に「裁判でどんな風に話したらいいのでしょうか、自分から話さないといけないのでしょうか、何を聞かれるのでしょうか」と伺ったところ「1回目はだいたい提出した書類をそのまま自分が述べたことを意味する「陳述します」の一言だけ言う形になると思いますよ」と言われたので落ち着いて望むことができました。

しかし実際は「陳述します」を述べる前に裁判官から提案がありました。「この事案は簡易裁判所ではなく地方裁判所での審理に切り替えたほうが良いかと思うのですがそれでもいいですか」と聞かれました。簡易裁判所と地方裁判所で何が異なるのかと尋ねると「地方裁判所での審理になると専門家等の第三者の意見も取り入れ審議し、その際録音や調書もとることになるので原告側としてもいいのではないか」とのことでした。そう言われたら従うしかないので、わかりましたと答え、建築会社の代理弁護人もOKを出し、簡易裁判所から地方裁判所での審理へと切り替わることになりました。

よく裁判は「判決が出るまでにかなりの時間を要する」「数年かかることもザラである」と言いますが、日程調整に時間がかかることと、全て紙面上での提出を求められることにあると思います。原告・被告の日程の都合が合う日がないとどんどん遅れますし、書類を提出するにもデータでは送れないので直接持っていくか郵送する必要があります。この時代にかなりアナログな手続きなのではないかと思います。仮に色々なことがスムーズにいっても良くて1ヶ月に1回の裁判しかできません。私達も訴状を提出してから1回目の法廷に立つ場面まで4ヶ月かかりました。

被告代理弁護人が途中で辞任

そう、まさかの出来事が起きました。建築会社の顧問弁護士が裁判の途中で辞任したのです。弁護士が途中で辞任するなんてよほどのことだと思います。
しかし考えられることはたくさん。。
そもそも建築会社がさんざん私達に対して言ってきた内容がその弁護士が提唱している内容と矛盾していること、建築会社は8日分の損害金をすでに支払ったと嘘を言っていること(こちらは3ヶ月分の遅延損害金を請求しているので一切損害金は受け取っていない)、打ち合わせ時から引き渡しまで建築会社がどのような対応をしていたかを一切知らされずに遅延した事実だけ聞いて弁護した・・・などが原因なのではないかと思っています。
またはこんな少額訴訟に弁護士をつけてもただただ弁護士費用がかかり損をするだけだと今更気づいたかのどちらかだと思います。
どちらにせよ、十分な聞き取りをせず引き受けた弁護士も任せた建築会社も本当に管理能力・運営能力が低いなと思います。

地方裁判所での審理に

簡易裁判所から地方裁判所での審理に切り替わり、被告代理弁護人が辞任をしてから初めての裁判所。今回は簡易裁判所ではなく、管轄地区の地方裁判所へ行くことになりました。
今回は法廷ではなく、円卓に座っての審理となりました。ここで恐れていたことが。住宅設備打ち合わせ時で私達に威圧的な態度をとり、私達の目の前で部下を怒鳴りつけ、打ち合わせが長くなると明らかに不機嫌になる社長が現れたのです。さんざん遅延しておいて一度も謝罪にも説明にも来なかったくせに、今回裁判所に現れました。もちろん今回も謝罪はなし。二度と会いたくなかった。
席に着くと裁判官から「今回の事案ですが、内容的にも和解で進めるほうが良いかと思いますが、いかがでしょうか」と言われました。正直「え?」という感じでした。和解で良いのならわざわざ地方裁判所に切り替える必要はなかったはずです。私達の主張に対して被告側が納得できないから少額訴訟から通常訴訟に切り替えたんだよね?何も反論してこないの?と思いましたが、「和解はしたくない」などと言えるはずもありませんでした。

まず原告である私達だけがその場に残り裁判官と話しをすることになりました。
最初に裁判官から「大変な思いをされましたね」「和解で大丈夫でしょうか」と確認を受けました。「和解の場合、被告側がいくらか支払って和解となると思いますが最低この金額は請求したいという金額はありますか」と聞かれました。「私達は法律について素人であり請求額の相場もわかりません。そのため請求したこの56万という金額は契約書に則り計算したものなので、ここから減額するのであればこちらが納得する説明を求めます。」と答えました。私達は納得できる理由と説明があれば、それに基づいて○日分の損害金は免除するつもりでした。次は被告側の言い分を述べる番になり私達は退室しました。
しばらく経って再び部屋に呼ばれました。裁判官から「50万円の和解でどうかと被告は言っていますがどうでしょうか」と言われました。「6万円減額した理由はなんですか?説明はあったのですか?」と聞くと「56万円の請求だったからキリ良く50万円にした」というような内容でした。は?なにそれ?って感じでした。私達の主張に適当に最初反論しておいて、いざ和解となったら値切ってくる。最初から最後まで本当に誠意のない計画性のない会社だなと思いました。「何の説明もなくこちらが減額に応じる理由はないので請求額満額の支払いを求めます」と答えました。
再度私達は退室し、被告側にその内容が伝えられました。最終的に被告側が56万円の支払いを了承し、請求額ほぼ満額(端数はキリました)支払いでの和解ということで終了することとなりました。正直和解にするのも腹立たしかったのですが、これ以上揉めたところで裁判官への心象が悪くなるだけでこちらに何のメリットもないと判断したため和解での解決を選択しました。ですが、結果訴訟内容が審議されることはなかったため、普通裁判に切り替えた意味がなかったのではないかと思います。しかも和解のため相手側に裁判費用を負担させることはできず自己負担となりました。

本人訴訟する上で不安だったこと

一番の不安はすべてが初めてだったということです。裁判所に行くことも、訴状を作成することも、法廷に立つことも、私達はただの一般人なので全てが初めてでした。また友人に相談した際「どんなに自分の言い分が正しかったとしてもうちらは法律に詳しくない。弁護士はどんな内容でもそのエキスパートであるから色々な抜け道を見つけて戦ってくる。だから油断はできないよ」と言われました。結局裁判は法律を知っているかどうかが一番重要になってくるとのことで、確かにその通りだと思いました。そのため主張したいことの抜け漏れが絶対にないように、大事な部分は必ず証拠を出し、向こうの主張で間違っていると思うことは一つ残らず反論することを心がけました。

本人訴訟を終えた感想

完全な勝訴とはなりませんでしたが、請求金額ほぼ満額を支払ってもらうことになり、訴状を出してから約半年ほどで決着がつきました。1年位かかるのかなと覚悟していたので終わりは早かったのかなと思います。しかし、準備書や答弁書を作成しメールなどの証拠を揃えるのにかなり時間と労力を要したので請求額に照らし合わせてもマイナスにはならなかったものの割には合わないなと感じました。しかも、そもそもこの損害金は遅延したことにより発生した仮住まいの家賃代、駐車場代、その他負担した費用であるためほぼ利益にはなりません。それでも仮に裁判を起こしていなかったらこの金額がただただ私達のマイナスでしかなかったので、裁判をして満額の請求支払いさせることができたことには意義があったのかなと思います。また裁判官も「これだけの書類を用意したことで言い返せないと思ったようだ、被告側も仕事の仕方を改善するのではないか」とおっしゃっていました。(絶対しないと思うけど)

そもそもこんな裁判を起こさないためにも

私達の最大のミスはこの建築会社を選んでしまったことです。
スーモカウンターで紹介され、いくつかの建築会社の中からデザインと予算でこの会社を選びました。契約するまではいい感じの対応だったことと予算内にもおさまる費用感でもあったためこの会社を選びましたがそれが大きな間違いでした。契約するまではレスポンスも早かったのが契約後から連絡が遅くなり数週間連絡がないことも。社長好みのデザイン推しで外観重視。風通しなどほとんど考えられていない仕様。事前に私達の要望を伝えていたにも関わらず最初に提示された費用はその要望がほとんど反映されておらず要望を反映させると結局1000万近く値上がる計算に。「うちは安く仕入れられるから」と言っていたが蓋を開けてみれば全体にかかる管理費パーセンテージ(建築会社の利益にあたるところ)が他社よりもかなり高めに設定されていたこと(契約後に判明)・・・などなど悪質営業とも取れる体制の会社でした。
事前にネットでその会社について調べたつもりでしたが、調べ方が甘かったようで良い情報しか出てきませんでした。しかし契約後あまりに対応がひどくなってきたので「会社名 口コミ」で調べたところある掲示板を発見。中を見てみると私達が受けた内容とほぼ同じような口コミが多数書き込まれていました。私達だけじゃなかったんだと思うと同時に契約前にこの掲示板を見つけていれば・・・という後悔が強くありました。なので、これから建築会社を探す人は必ず口コミを検索してください。Googleマップに出てくる評価を見るでも良いと思います。ひどい会社はどこかしらで必ず指摘をされています。こんな被害を受けないためにも。

一般人が訴訟することについて

もちろん誰にでもミスはあるし、連絡が遅くなることだってあるとは思います。ですが、この建築会社はその度を超えている上、改善が見られない、ミスが多すぎる、上司が一度も説明・謝罪に来ない全くもって誠意のない会社でした。そしてその体制が長年続けられていることに本当に憤りを感じます。そのため、今回裁判を起こすことで建築会社に責任を取ってもらうことができたことには満足していますし、泣き寝入りしなくて本当に良かったと思います。

本人訴訟にはリスクもあり覚悟が必要

しかし注意も必要です。私達はかなり早い段階からこの会社がやばいなと感じていたので口頭での約束は一切せずなにか記録に残る形で連絡を取るようにしていました。今思えばその頃から裁判を視野に入れていたと思います。依頼はしなかったものの何人もの弁護士に相談をし、内容的に訴訟して勝てる見込みがあるかを十分に確認してから裁判に望みました。また私達の主張が被告代理弁護人が対外的に発信している内容と一致していたこと、そのために(?)途中で被告代理弁護人が辞任し法律知識的に対等になったこと、対応のひどい会社ではあったが家自体に欠陥はなかったこと、通常裁判で担当してくれた裁判官が優しく私達の気持ちに寄り添ってくれたこと、弁護士が辞任してからは一切反論しなくなったことなどが重なって運良くこのような結果になったと思います。
例えば遅延損害金を請求する意志を見せた時点で突貫工事をされ無残な家になっていた可能性もありますし(我が家はそれを避けるため引き渡しが終わってから請求しました)、敏腕弁護士が担当となっていたらどんなにこちらが正しいことを言っていたとしても負けていた可能性もあります。弁護士対本人の場合、裁判官が弁護士に有利な対応をするという記事も読んでいたので担当裁判官によってはこのような終わり方ができなかった可能性もあります。そして仮に私達の言い分が通らなかった場合「こんな裁判を起こしやがって」と逆に訴えられる可能性もありました。それだけのリスクを背負い、覚悟をもって望んだ訴訟でした。

まとめ

まずはこんなひどい建築会社を選ばないことが最重要ですが、最初の時点でその会社がいい会社かそうではないかを見分けるのはかなり難しいと思います。打ち合わせを進めていく中で少しでも変だな・あやしいなと感じたら、言った言わないにならないよう何事も記録に残すようにしてください。安易な訴訟はオススメしませんが、明らかに建築会社に過失がありそれによる遅延の場合は泣き寝入りする必要はないと思います。入念な下調べと万全な準備があれば損害金を請求することは可能だと思います。この経験が少しでも誰かの役に立てば幸いです。

 

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ABOUT ME
kotopapa/kotomama
神奈川県在住。 30代夫婦。 理想の注文住宅を建てるために奮闘中。